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第1回目(後半)「幸せと暮らしを支えるために」

インタビュー

本記事は後半になります。前半はこちら

木田 和枝さん

クオール薬局たちばな台店
統括主任 兼 管理薬剤師

森川 悦明

聴き手
事務局長

 

地域医療で大切な立ち位置にいる
医庵と在宅医療に関わることは幸せ

医庵からの電話なら、夜間でも喜んでかけつける

森川
お話を伺っていて、私も思い出すことがあり、もらい泣きしてしまいました。訪問というかたちの医療だからこその価値が、あるように感じますね。
木田
こういう経験ができる薬剤師は、決して多くはないと思いますが、医庵と在宅医療に関わるようになってから、若い薬剤師たちも同じような経験をしていて、みな励みを感じて仕事をしています。先生から電話があると、次の日に嬉しそうに報告し合ったりしていて、一緒に仕事をするひととの関係が宝物で、経験が財産になっている気がします。
森川
でも、いつでも薬をとどけるというのは、大変な仕事ですよね。辛いこともあるのでは?
木田
ある日、お住まいで転倒し額を切ってしまったお年寄りを、吉澤先生が出向いて、額を縫っていました。その日は日曜日だったのですが、抗生剤を出してくれないかと頼まれて、お薬を持ってかけつけました。私たちも、医庵と同じように24時間対応なので、薬局の窓口業務が終ったあとも、電話は店舗から夜間携帯に転送され、薬剤師が対応できる仕組みにしています。吉澤先生からは、薬剤師の夜間携帯に直接電話がかかってくるのですが、喜んでかけつけています。
森川
ありがたいお話です。地域で患者さんの生活を支えるということは、木田さんのような気持ちがないと、できないことだと思います。
木田
吉澤先生に限らず、医庵の先生方は臨時で往診をしてくださっています。私たちは、地域医療における医庵の存在はとても重要だと思っていて、クオール薬局のたちばな台店も一緒になって、地域のみなさんの暮らしを守ることができるので、本当にやりがいがあるのです。医庵の事務長さんや看護師さんからは、私たちの仕事が過剰にならないか優しく配慮してもらうのですが、「こういう患者さんですが、調剤を引き受けてもらえますか」と依頼を受けると、絶対に断らないです(笑)お互いが気を配り合える関係も、幸せなことです。冗談ではありますが、職場でよく言ってるのは、「私たちは、クオール薬局というより、クリニック医庵薬剤部だね」って(笑)みんな楽しそうに、医庵の先生や看護師さんと仕事をしていますよ。

 

その患者さんを診るためには、知識豊富なオールラウンダーであること

森川
木田さんのお話を伺っていると、なんだか元気をもらいますね。屈託なく、明るくお話しされるので、辛いことも吹き飛ばしてしまいそうですが、苦労話もお聞きしたいのですが。
木田
薬剤師には、いわゆる専門科がないのです。今でこそ「がん専門薬剤師」※という有資格者もいますが、薬剤師のほとんどはオールマイティで、さまざまな処方を受け付けなければなりません。クオール薬局たちばな台店には2,000近い種類の薬がありますが、薬剤師は全員、その名前、効能、副作用などを覚えています。循環器の薬から水虫の薬まで、一日何回とか、食前食後とか、容量や用法も、何でも覚えていないといけません。
一方、医師には専門科があるわけですが、在宅医療に関わる医師の領域はオールマイティである必要があるので、医庵のお医者さんと一緒にいると、どうやってそんな知識を身につけたのかなと不思議に思いますし、本当にすごいなあと感じています。今まで出会ったたくさんの患者さんで、何人もの方々から、「こんな先生に出会えて、ラッキーです」と、本当によく言われます。余命を宣告され、痛みもあり、いろいろな注射をされ、麻薬も服用している患者さんから「ラッキー」という言葉を聞くと、正直、すぐには頷けないのですが、「医庵の先生に出会えて、本当に幸せ」と患者さんやご家族から言われると、私たちも医庵のお医者さんと一緒に訪問医療に関わっているから幸せなんだなぁ、と思うのです。

在宅で暮らす患者さんを、一番良いかたちでサポートしたい

森川
聞き流してしまえば、我がことに置き換えることもない医師への感謝の言葉を、そのように受け止められるのは、木田さんにとって、在宅医療に携わる薬剤師が、正に天職だからでしょうね。
木田
そうかもしれませんね(笑)外来でいらっしゃる患者さんたちは、薬局に足で歩いてお薬を受け取ることのできる方々ですが、在宅の患者さんたちはそれができない人たちです。こちらが出向いて、プライベートも含めて関わっていくので、それぞれの生活に私たちが合わせて、対応していかなければなりません。患者さんのご希望やなさりたいことを伺って、考えないといけないのです。
例えば、在宅の患者さんを訪問すると、ご家族が不在の時にはトイレに行くのも不便だろうけれど、それでもこの方は、我が家にいることが嬉しいのだろうなあと感じたりするのですが、その方の日常を想像し、気持ちを推し量れば、望んでいることをして差し上げることができると思うのです。医師も看護師も、薬剤師もケアマネジャーも介護士も一緒になって、一番良いかたちで、その方が望む生活になるようにサポートすることが、在宅医療に関わる者の役目だと思っています。
森川
胸に響くエピソードを通じて、木田さんの在宅医療に注ぐ思いと、一緒にチームを組んで患者さんをサポートする医療人の矜持も伺うことができました。ありがとうございました。これからも地域医療のために、一緒に頑張りましょう!

 

 

※がん専門薬剤師:日本医療薬学会が認定する資格。「がん領域における薬物療法などについての高度な知識と技術を用いて、医療機関においての質の高いがん薬物療法を実践する者」と認められた薬剤師のこと。
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