お知らせの記事
第6回目(後半)「幸せと暮らしを支えるために」
インタビュー
横山 郁子さん
株式会社パーソナル・ナース代表
一般社団法人神奈川県訪問看護ステーション協議会 顧問
かながわ介護予防・健康づくり運動指導員
看護師/介護支援専門員/日本旅行医学会認定看護師
森川 悦明
聴き手
医療法人社団フォルクモア
事務局長
ご利用者が主語になる姿勢で
互いを信頼できるチームを作る
横山さん
お住いに入る訪問看護の仕事には、辛いことが沢山あるものです。綺麗なお住まいばかりではないし、相性だってあるかもしれない。威圧的にものを言われることもあるし、罵倒されることさえあるので、辛いことや嫌なことから逃げてしまい、訪問看護の目的をうやむやにしてしまうことがあります。
私たちの訪問看護ステーションでも、時として、主語が自分たちの立場になってしまうことがあります。そんな時に私は「今の話の主語は誰なの」と、よく口にします。「主語はどこ」「主語は誰」と、もうそれしか言わないというぐらい、口酸っぱく言っています。この利用者さんのためにどう考えて、今、自分はどう行動するのかを考える看護のプロフェッショナルを作らないといけないと考えているからです。
大言するようですが、日本の看護領域は、まだまだだと思います。せっかくの国家資格を持っていながらすぐ辞めてしまうなんて、何のために資格を取ったのかとさえ感じます。
私たちの訪問看護ステーションでも、時として、主語が自分たちの立場になってしまうことがあります。そんな時に私は「今の話の主語は誰なの」と、よく口にします。「主語はどこ」「主語は誰」と、もうそれしか言わないというぐらい、口酸っぱく言っています。この利用者さんのためにどう考えて、今、自分はどう行動するのかを考える看護のプロフェッショナルを作らないといけないと考えているからです。
大言するようですが、日本の看護領域は、まだまだだと思います。せっかくの国家資格を持っていながらすぐ辞めてしまうなんて、何のために資格を取ったのかとさえ感じます。
森川
確かに、医療、看護、そして介護のサービスには、主客が逆転するような場面がありますね。してあげているような立場を感じることは、少なくないかもしれません。
横山さん
プロフェッショナルとなるための教育を受けていないので、そうなってしまうと私は感じています。したがって、「ナースの家すすき野」に入った看護師には徹底的に教育しています。「利用者さんが主語になる」という姿勢の根幹は揺るぎないものにしたいのです。
森川
なるほど、訪問看護事業所や「まちの保健室」を運営する株式会社パーソナル・ナースという会社を作ったのは、そういうことも視野にあったのですね。地域に間口を広げた「まちの保健室」、 地域との関連性を深める活動、そして非常に具体的な事業である訪問看護という事業。横山さんならではの、教育の領域にまでビジョンを持って臨んでいるというところが頼もしいです。
横山さん
そんなに深く考えているわけではないですよ(笑)。コツコツと少しずつ続けているだけ。でも追いかけているものがあるから、挫ける理由もないです。
最近、私たちは「死に神」になっちゃいけない、「看取り屋」になっちゃいけないと、よく言っています。病気で亡くなる人がいても、その最期の瞬間までは生きているのだから、生きる希望を与えるのが私たちの仕事だと。
訪問看護ステーションが「うちは月に何十件も看取っているのです」とか、訪問診療クリニックでも「看取りの件数は何件あります」とか誇るように掲載しているところがありますが、それって大丈夫なの?と思います。看取った件数よりも、そこまで生きたことをどのように支えたのかという内容だったら良いと思うのですが・・・。
最近、私たちは「死に神」になっちゃいけない、「看取り屋」になっちゃいけないと、よく言っています。病気で亡くなる人がいても、その最期の瞬間までは生きているのだから、生きる希望を与えるのが私たちの仕事だと。
訪問看護ステーションが「うちは月に何十件も看取っているのです」とか、訪問診療クリニックでも「看取りの件数は何件あります」とか誇るように掲載しているところがありますが、それって大丈夫なの?と思います。看取った件数よりも、そこまで生きたことをどのように支えたのかという内容だったら良いと思うのですが・・・。
森川
うーん、目が覚めるお話です。
訪問看護をされるお立場から、私たち訪問医療をしている側、ドクターに望んでいることはありますか。あるいは、こういうことが望ましいというアドバイスなどありますか。
訪問看護をされるお立場から、私たち訪問医療をしている側、ドクターに望んでいることはありますか。あるいは、こういうことが望ましいというアドバイスなどありますか。
横山さん
お互い求めている情報は、ドクター側と訪問看護側で共通するものもありますし、そうではないものもあると思うので、お互いが納得できる情報共有の仕方には、いつも気を配っています。ドクターたちは忙しいので、経過から説明するのではなく「こういう指示が欲しい」という結論から話すよう心掛けています。
仕事としては、お互いを知っている者同士の方がやりやすいですね。たとえば、クリニック医庵の吉澤先生に対しては、どういうお考えで、大体どういう指示を出してくれるのか、こういったケースには多分こういうことをしていくだろうと予測を立てることができます。それは吉澤先生の医療を私たちが知っているからで、お互いを知り得る環境の中で大切な利用者さんを診ていくことができます。そのような「お互いを知るチーム」を作ることが結果的に良い仕事に繋がっていくのだと思います。
仕事としては、お互いを知っている者同士の方がやりやすいですね。たとえば、クリニック医庵の吉澤先生に対しては、どういうお考えで、大体どういう指示を出してくれるのか、こういったケースには多分こういうことをしていくだろうと予測を立てることができます。それは吉澤先生の医療を私たちが知っているからで、お互いを知り得る環境の中で大切な利用者さんを診ていくことができます。そのような「お互いを知るチーム」を作ることが結果的に良い仕事に繋がっていくのだと思います。
「看護を買いたい」と
言ってもらえる世の中に
森川
横山さんは訪問看護に限らない活動をたくさんされているところがとてもユニークで立派だなと思うのですが、その最終目標というか、いろんな活動の目指している終着点をどのように考えているのですか。
横山さん
病気になったら、ドクターがいる病院に行くのと同じように、健康や病気の予防を相談したいと思ったら、看護師のところへ行くことができる、そんな風に、看護師を直接指名できて、看護を買える世の中にしたいと、私は思っています。
看護は、どうしても医療とセットで、イコール「医療処置」という認識が、まだまだ一般的だと思うのですが、実は、国際看護師協会(ICN)の看護の定義では、疾患のある方を看ていくのもそうですが、「健康を予防していくこと」も、「地域の健康を担っていき、健康を増進していく」という役割も、立派な看護のお仕事だと示されています。
また、全国訪問看護事業協会が出している訪問看護ステーションの自己評価ガイドラインでは、その最終段階は「地域のための訪問看護ステーション」となっています。目指すところはそこだと、協会が指標として出しているのですね。それって「まちの保健室」じゃないですか(笑)。
住民が困った時に「これってどうしたら良いのだろう」「何科に行ったら良いのだろう」「この検査データをもらったけれども、何に気をつければ良いのだろう」といった相談を、看護師が直接受けることができる世の中にしたいと思っています。「お家に来て欲しい」「看護サービスを使いたい」と、多くの人が望む世の中にしたくて、私は活動しています。
看護は、どうしても医療とセットで、イコール「医療処置」という認識が、まだまだ一般的だと思うのですが、実は、国際看護師協会(ICN)の看護の定義では、疾患のある方を看ていくのもそうですが、「健康を予防していくこと」も、「地域の健康を担っていき、健康を増進していく」という役割も、立派な看護のお仕事だと示されています。
また、全国訪問看護事業協会が出している訪問看護ステーションの自己評価ガイドラインでは、その最終段階は「地域のための訪問看護ステーション」となっています。目指すところはそこだと、協会が指標として出しているのですね。それって「まちの保健室」じゃないですか(笑)。
住民が困った時に「これってどうしたら良いのだろう」「何科に行ったら良いのだろう」「この検査データをもらったけれども、何に気をつければ良いのだろう」といった相談を、看護師が直接受けることができる世の中にしたいと思っています。「お家に来て欲しい」「看護サービスを使いたい」と、多くの人が望む世の中にしたくて、私は活動しています。
森川
ゴールは近づくとまた遠くになると思うのですが、高いところにあるゴールを目指すことは、素晴らしいことですね。実際、そうした目標を掲げる人は少ないと思いますが、訪問看護事業に携わった時から、そこまで見えていたのですか。あるいは進んでいくうちに、考えるようになったのですか。
横山さん
いえいえ、最初は全然わからなかったです。訪問看護で、お住いに暮らす方の病気を看ていくうちに、もっと生活に看護が必要だ、もっと家族に看護が必要だ、その周りにいる地域の人たちにも看護が必要だと、徐々に広がっていきました。その結果、世の中にとって看護はどうあるべきかを考えるようになったと思います。
森川
横山さんが、地域を看るという信念を曲げず、夢を追いかけ続けているのは、少し羨ましいです。
困っている人とか、悩んでいる人に伝えたいメッセージはありますか。
困っている人とか、悩んでいる人に伝えたいメッセージはありますか。
横山さん
困り事とか悩み事には、人と繋がることでいろいろな知恵をいただいたり、さらに繋がりをいただいたりすることが大切だと思います。すぐに根本的な解決ができないときでも、お話をすることで和らぐことができると思います。悩みを内に溜めず、お話ができる繋がりを持っていただけるよう、ぜひ「まちの保健室」をご利用いただきたいですね。
森川
そうですね。多くの方々が「まちの保健室」で繋がって、安心を得てほしいです。
最後に、これはちょっと大きな問題なのですが、いま、医療・福祉に欠けていること、求められていること、できればこうあってほしいみたいなことはありますか。
最後に、これはちょっと大きな問題なのですが、いま、医療・福祉に欠けていること、求められていること、できればこうあってほしいみたいなことはありますか。
横山さん
やはり、私の一番の夢であるところの、看護師が独自にサービスを提供できるということです。今の制度では、訪問看護は「指定訪問看護事業」という制度の中でしか起業ができないですし、保険を使ってやることには限界があります。
また、保険制度の枠組みでは、介護保険も使わなきゃいけない、健康保険の分野も使わなきゃいけない、医療保険の分野も使わなきゃいけないと、ちょっと複雑すぎると思うのが正直なところ。利用者さんたちがもっと簡単に、「うん、使える」という仕組みにしなければいけないと思います。
一方、本当に社会復帰させるためには、お家の中だけではない訪問看護だって必要と思うので、もう少し柔軟性のある仕組みができたら良いと思います。看護師は国家資格を持っている人間ですから、そこにもっと責任を与え、制度外でもできるサービスの範囲を広げるべきではないでしょうか。
あとは、一人の利用者さんに対して、その人の生活を支援する人があまりにも縦割りになっています。在宅で療養する人にはケアマネジャーがいて、往診医と看護師がいて、さらに訪問看護も何人もいて、訪問介護も何人もいてという具合ですが、利用者さんは、それで本当にハッピーなのでしょうか。
また、保険制度の枠組みでは、介護保険も使わなきゃいけない、健康保険の分野も使わなきゃいけない、医療保険の分野も使わなきゃいけないと、ちょっと複雑すぎると思うのが正直なところ。利用者さんたちがもっと簡単に、「うん、使える」という仕組みにしなければいけないと思います。
一方、本当に社会復帰させるためには、お家の中だけではない訪問看護だって必要と思うので、もう少し柔軟性のある仕組みができたら良いと思います。看護師は国家資格を持っている人間ですから、そこにもっと責任を与え、制度外でもできるサービスの範囲を広げるべきではないでしょうか。
あとは、一人の利用者さんに対して、その人の生活を支援する人があまりにも縦割りになっています。在宅で療養する人にはケアマネジャーがいて、往診医と看護師がいて、さらに訪問看護も何人もいて、訪問介護も何人もいてという具合ですが、利用者さんは、それで本当にハッピーなのでしょうか。
森川
現行制度は積み上げられたというよりも、横に膨らんできた印象ですね。主語にあたる利用者さんの生活を整える立場として、看護師の役割が認識されるといいのですが。
横山さん
もっと資格を活かせれば、もっと良くなるというのが私の立場です。そのために、やはりパーソナル・ナースの役割があるって、良いでしょ(笑)。
そういう自信を持って、こうあるべき、私はこうなるっていう看護師を増やしたいと思います。
そういう自信を持って、こうあるべき、私はこうなるっていう看護師を増やしたいと思います。
森川
今日は、大変に刺激を受けました。私たちも地域の医療・福祉を担う一員として、夢を共に追いかけたいです。
勇気が出るお話をいただき、ありがとうございました。
勇気が出るお話をいただき、ありがとうございました。