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interview

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第6回目(前半)「幸せと暮らしを支えるために」

インタビュー
横山さん写真

横山 郁子さん

株式会社パーソナル・ナース代表
一般社団法人神奈川県訪問看護ステーション協議会 顧問
かながわ介護予防・健康づくり運動指導員
看護師/介護支援専門員/日本旅行医学会認定看護師

事務局長写真

森川 悦明

聴き手
医療法人社団フォルクモア
事務局長

 

 

地域の看護師が「まちの保健室」にいる
足りないものをパーソナル・ナースで実現

生活を看ていくことが
訪問看護の重要性と役割

森川
今日は、医療が必要になったときに地域の看護師に頼るという方法があるということを、より多くの方々に知っていただきたくて、横山さんのお話を伺います。
私は日々、思いと行動力を併せ持った横山さんを敬服しているのですが、どうしてここに至ったのか、まずは病棟勤務の看護師から地域の訪問看護師として働くようになった経緯をお聞かせください。
横山さん
私は、大学病院の消化器外科で8年間ほど勤務しましたが、病棟では疾患や病気を診る、病気を治す、つまり病気にクローズアップした業務なので、患者さんと接する期間も短かったです。
その頃に母の癌が見つかり、手術はしましたが、寝たきりの状態になってしまいました。まだ介護保険制度が始まる前のことで、癌末期の方を在宅医療で診ていくことが難しい時代でした。
そんな中でも、母はお家に帰りたいと言っていました。病院のドクターたちに相談しながら、どうやったらお家に帰れるのだろうかといろいろ考え、その願いを叶えましたが、当時、消化器外科の病棟では癌末期の方が多く、母に限らず「家に帰りたい、帰りたい」と言っている方がたくさんいらっしゃいました。この方たちが人生最期の大切な時間を、病院で過ごして良いのだろうかと、正直思いました。その大切な時間を重視する方法がないものかと考え抜いた結果、訪問看護の道を選ぶことにしました。

 

森川
同じ思いを持つ方は多いですが、行動することは簡単ではありません。選択は正しかったですか?
横山さん
訪問看護をするようになって20数年ですが、その人の生活を看ていくという、病棟の看護ではできない役割があるので、とても意義のあることだと感じています。
ただ、今は自信をもってそう言えるのですが、訪問看護に移ったころは大きな壁がありました。それは、一人で行って利用者さんを観察して、自分で判断してケアをしてくるということでした。病棟では医師の指示がありますが、訪問看護では自分で判断することにまだ自信が持てなかったし、怖さも感じていました。
でも、次第に生活を看ていくことが大切なのだと気づくようになりました。自分がアドバイスをしたことで、行動がどんどん変わっていく利用者さんの姿を見るようになると、一人で行くからこそ看護の結果を味わうことができると感じるようになりました。
病院だけじゃない、病気だけじゃない、治療だけじゃない、生活を看ていくことにも看護の大切な役割があるのだと理解出来るようになり、そのプロになろうと強く決意しました。訪問看護事業所を起業したのは4年前です。起業に勇気はいりましたが、同じ考えを持っている仲間と支えてくれる方々に助けられ、今日に至っています。
横山さん写真

 

森川
横山さんの持っている力ですね。横山さんは、看護学会などの組織の中でもご活躍されていますが、在宅の訪問看護に、こういう形で力を注ぎましょうというような動きはあるのでしょうか。
横山さん
今は、時代の流れが在宅医療ということもあり、地域ごとの人口に見合う数だけの訪問看護師を養成しようという動きがあります。現在、神奈川県訪問看護ステーション協議会の顧問をしていますが、会長をやっていた頃は、もっと増やそうと、研修もどんどん行っていました。
しかし、訪問看護をやりたくて始めても、私も最初につまずいたように、一人で行って帰って来るということが怖くなって、辞めてしまう人も一定数いるわけです。そこにはちょっとした壁があるということを私自身が経験していたので、辞めてしまう人を少しでも減らしたいと考えて、訪問看護ステーションに行ってアドバイスをしたり、研修をしたり、専門誌に執筆したりしていました。
森川
そうしたご活躍がありながら、「まちの保健室」という機能を、どうしてここ青葉区すすき野に設けたのでしょう。
横山さん
訪問看護ステーション「ナースの家すすき野」を作る前に、すすき野団地の中で「団地の保健室」を開かせていただいていたご縁が、発端です。その繋がりの中で、団地の高齢化問題を重たく感じていたことと、「すすき野地域ケアプラザ」の所長さんにも親交をいただいていたので、小児から高齢者までを対象とする看護の中でも、高齢者に特化して取り組んでいけたらという思いが強かったのです。
そして2年半前に、団地の方々の目に留まるところ、気軽に「ねえねえ、看護師さん」と入って来てくれるような場所を探し、この路面の場所を見つけて、「まちの保健室」を開くことにしました。
森川
とても2年半とは思えないほど、地域に定着していますが、20数年という長い期間に培った、この地での人のつながりから、「まちの保健室」が必要になったのですね。
森川写真

いつでも、なんでも看護師に
相談できる「まちの保健室」

横山さん
「まちの保健室」の役割は三つあって、一つ目は「看護師がここにいますよ」「いつでも看護師に会いに来て、相談してね」という相談事業です。たとえば、「健康診断を受けて結果をもらったのだけれど、生活の中で何に気を付けたらいいの」とか、「私の連れ合いが癌の末期って言われて、病院を追い出されちゃったの。自宅での看病の仕方を知りたいわ」とか。担当医師はこれ以上の治療はできないと説明しているのでしょうが、医療の通訳的な説明が必要だったりもします。
こうした病気や健康に関することはもちろんですが、家族関係のこととか、相談事は本当にいろいろです。「自分はひとり暮らしなのだけど、この先何を準備していけば良いのか」とか、相続のこととか。相続や任意後見などについては、それぞれの専門家を「まちの保健室」に呼んでいます。個々に、専門家につないでいくという役割も担っています。
二つ目は、看護師の役割として、健康を増進していくための情報を提供する場です。毎月やっている地域のイベントは、体操教室だったり、綺麗になって元気が出るビューティーの会だったり。今日はさきほどまで、芸大卒の声楽科の先生が来てくれて、発声から本格的に取り組む歌の会をしていました。
三つ目は、コミュニティの場であることです。この団地には、家を売って団地住まいをしている方も結構多くいらっしゃいます。元々団地暮らしで、連れ合いを亡くして一人になってしまった方もいるし、高齢になって周りにお友達がいなくなったという話も多く聞きます。そこで、イベントが終わった後にお茶会をすることにしました。お茶を出してお話する中でお友達が出来て、そのお友達同士がコンサートなどに行かれています。こうしたコミュニティ作りの場も「まちの保健室」の役割かなと思います。「最近ね、こんなことがあったのよ」と世間話をすることで、人と人が繋がっている場所なのです。

保険制度だけでは足りない何かも
パーソナル・ナースで実現

横山さん
今まで接してきたご利用者やご家族から、「もっと、こういうものがあったらいいのに」という言葉を、その場その場でいただいてきました。その人が満足できないのは、申し訳ないという気持ちがずっとありました。
申し訳なく感じる人を次に生まないためには、どうすれば良いか。そのためには、サービスの種類を増やせば良い。その人が選択できるようになれば、ご利用者にとって少しでも満足のいく生活ができるのではないか、と考えるようになりました。
保険制度の中では「指定訪問看護事業」をやっていますが、選択肢を増やすために、自費の訪問看護にも取り組んでいます。たとえば、看護師が病院に付き添えたら、ご利用者やご家族が思っていることを医師に伝えやすいし、医師が言っていることを通訳することもできるわけです。これは、保険制度の枠組みの中ではできないことです。また、保険制度を利用した訪問看護では関わる時間に制限があるのですが、もっと長く関われたら、ご家族がもう少し余裕を持って買い物に行くこともできるわけです。「看護師と一緒に旅行に行けたらいいね。そうしたら、楽しみを失わずに、これまでの生活が続けられる」そんな言葉を沢山聞いてきたので、それをパーソナル・ナースで実現しようと思い立ちました。
森川
ご利用者の本当の声を聴くことは、実は、なかなかできないことなのですね。そこに至り、それを実現しようと踏み出されたことが、よく分かりました。

 

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